第11章 世界にひとつだけの花
【紙一重】
「え…?どういうこと?」
久しぶりにあった彼女は
何も持たず、いつものホテルに顔を出した
「あの男、全部話したって言うの。会社も責任取って辞めるって…」
話したって…、
(姉ちゃんに全部打ち明けたってこと?
それなら、結婚は…?
「ゆうのお姉さんなのよね?…全部許してくれたらしいの。だから、私が何しても無駄で……」
許す…?
全てを受け入れて、一緒になるって……?
「ゆう、私、やるだけやったわよ?
…それにね、あの人そんなに悪い人じゃないと思う。だから、認め…」
言い訳しながら、腕を掴んだ彼女を払いのけ、
冷たい視線で見つめた
「そう…
それじゃ、仕方ないね」
吸ってた煙草の火を灰皿に押し付け、
ソファーに掛けてたジャケットを羽織る
「ゆう…っ!待ってよ!」
「僕はね、
あの男が許せないの。君が何も出来ないなら、…もういいよ。
後は自分でやるから」
「ちょっと…っ」
何か言いかけた彼女を置いて
ホテルを後にした
沸々と湧き上がる苛立ちと、思い通りにならないもどかしさ
どうして
どうして
そこまでして、あんな男を選ぶ?
「小百合姉ちゃん!」
僕の声に振り返るあなた
痩せた身体に切なくなるけど……
その表情は、何処か穏やかで吹っ切れて見えた
「ゆう…?どうしたの?怖い顔」
施設内のホールの片隅にある納戸
片付けをする小百合姉ちゃんを見つけて
後ろから声を掛けた
大好きだから‥‥
愛しいから‥‥
同時に、あなたが憎い
こんなに、僕は
あなたを愛しているのに
狭い納戸に体を滑らし
後ろ手に鍵を掛けた
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