第11章 世界にひとつだけの花
【あと少し…】
写真をネタに、会社にバラすと詰め寄ると、元々気の弱い男は
彼女の我が儘に振り回されるようになった
僕からのご褒美欲しさに
彼女は必ず、お土産を持って会いに来る
男が、コツコツと貯めた結婚資金は、口止め料だとブランド品に化けた
帰宅時間が明らかに遅くなり、小百合姉ちゃんとは思うように会えないようだ
彼女の話では、日に日に焦燥しきってるらしい
「もうすぐ結婚するって人が、浮かない顔して」
そして、毎日顔を合わせる小百合姉ちゃんも、明らかに元気がない
裏での計画が、確実に影響してる
「そんな事ないわよ?……ちょっとしたマリッジブルーかな」
無理矢理な笑顔を見せるから、
堪らなくなって、……引き寄せ、抱き締めた
出来る限りの甘い声で囁く
「そんな顔させるヤツのとこなんか、行かないでよ」
納めた頭に唇を当て…、回した腕に力を込めると
「……ゆう、離して」
涙目で僕を見上げ、抵抗を見せた
胸を押す華奢な手を
このまま、何処かへ繋いでしまいたい
「私、彼を信じてるの」
昔から変わらぬ、意志の強い眼差し
確実に、婚約者の男に幻滅してる癖に……
そういう所も大好きだけど、ね
これ以上、あなたを傷付けたくない
だから、
……早く、アイツ捨ててよ
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