第1章 終わりの始まり
【スマイル】
「いらっしゃいませ」
店内に入ると 、気配で気づいたのか‥‥
姿も見えないのに、声だけ響いた
その声に、いるのだと確認して、そのまま奥に進む
大きな背丈のグリーンの影から
後ろ姿の彼女が立ち上がり振り返った
「あ‥‥」
小さく声が漏れ
俺は彼女に笑って見せる
「花‥‥下さい」
「‥‥はい!今日はどんな?」
考える素振りで、色とりどりの花を眺める俺に、彼女が口を開く
「この前のお花、どうでした?」
「え?‥‥ああ」
咄嗟に零れた出まかせ
“見舞いに持ってく花”
「喜んでたよ。すごく」
俺の言葉に、彼女は嬉しそうに微笑む
「良かったです」
あの後すぐ、コンビニのゴミ箱に捨てたけどね
「俺、一回しか来てないけど‥‥覚えてくれてたの?」
俺に気づいた瞬間の『あ‥‥』は、そういうことでしょ?
「覚えてますよ?
一度でも、お花を買いに来て下さった方は」
「そうなんだ」
彼女が笑う
きっと、接客用の誰にも見せる笑顔だ
だけど‥‥
‥‥アイツは
「ねぇ‥‥名前は?」
「あ‥‥この花ですか?」
俺の正面にある白い花に視線を落とす
それを手に取り、俺に向けた彼女に
俺も、同じ笑顔を‥‥
「違うよ。教えて?‥‥キミの名前」
君は僕のトモダチだ
だけど、とても純粋で真っ直ぐだから
少し心配になるんだよ
トモダチなら、
当然だろ?
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