第10章 夢見る頃を過ぎても
【夢見る頃を過ぎても 2】
俺に被さっていた男達を剥がし、身体を屈めると
乱れたジャケットを、グイッと引っ張って、俺の胸元を隠した
泣きそうなくせに
精一杯強がった表情
いつもの、…得意気な顔
フッと口角を上げたニノが俺を見つめて笑った
「ゴメンな?
オマエの好きなヤツわかってんのにさ?
……もう、我慢したくないんだわ」
「ニ……ノ……?」
グイッと腕を引かれ、
立ち上がらせられると
次の瞬間、………走り出してた
ざわつく部屋の中
捕らわれそうになりながらも
暗い廊下を凄い勢いで突き進んでく
飛び出した籠の中
夜の街を駆け抜ける
力強く引っ張るニノの、華奢な背中を見つめながら
ただ、夢中で、
走って、走って、
大丈夫だ
大丈夫だよ
汚れた俺らは
ちゃんと夜が隠してくれる
駆け抜ける黒いスーツ姿の俺らは
薄汚れた鴉みたいだ
それでも、
まるで番みたいに
月明かりの下
灰色の地面に、確かに繋がって見えた
それだけで俺は、
泣きそうだったんだ
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