第10章 夢見る頃を過ぎても
【流線】
-櫻井side-
容赦なく学ランもシャツも抜き取り
上半身裸にした雅紀を力任せに俯せにして
ひとつに束ねた手をシャツで後ろに結んだ
「痛っ、…っや、しょ…っちゃ…」
上がる息のまま、必死に言葉を零して…
絶え絶えに甘い息を漏らす
差し込む光が、雅紀の身体を綺麗に映し出した
潤んだ瞳が
抵抗はしなくとも、顔だけ振り返り、必死で何かを訴える
だけど…雅紀?
無理だよ
何もかも、もう手遅れなんだ
せめて、今だけでも、俺の捌け口になれよ
「…シよ、つったのはお前だろ?
まさか、ヤメてなんて言わないよな?」
俺を見つめたまま、唇を噛み締める姿に
二宮の部屋で見た光景が重なる
「責任とれよ?…俺の、こんな……なんだけど」
そう言って、主張し出した自分自身を示した
メチャクチャに汚したくなる
綺麗なものなら尚更
二宮の大事なモノを、
俺の手で……壊してやりたい
「とりあえず口でシてよ?……俺が好きなら出来んだろ?
やっぱり、嘘だった?
二宮相手だったら出来ンの?」
“二宮”って、単語ひとつで
ますます揺れる瞳
何、動揺してんだ
バレバレだろ?もっと上手く演技してみせろよ。甘いんだよお前は
中途半端な優しさなんか、通用しねぇんだよ
「……っ、俺っ…」
掠れた声と戸惑いを宿した瞳
涙が次々と溢れ出す
ここまで追い込まれてやっと、俺に懇願する?
"ホントはニノの事が好きだから止めて"ってさ?
屈んで顔を雅紀に近付け、
乱暴に顎を掴み、真っ直ぐに向けた
「なに?……ハッキリ言えよ」
二宮を呼んだって、
求めたって、
俺は……知らない
「しょーちゃん……っ」
雅紀は不自由な身体を伸ばし俺を見つめた
「手…取っちゃダメ?」
「駄目だよ」
「じゃ、もっとコッチ来て‥‥?」
泣いてる癖に、何で素直に従うんだよ
抵抗しろよ
繋がれた両手のせいで不自由な雅紀は
身体を反らし俺を見上げて、誘うように赤い舌を出した
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