第10章 夢見る頃を過ぎても
【FIND THE WAY】
ーニノsideー
見間違いかと思った
本性を明らかにしてから、いくら笑ってても冷たい瞳をしていた櫻井が、
涙を、……流してた
「母さんより、…俺より、
ソイツが大事だって…?」
秘めた思いを吐露する姿は
整った顔立ちが相俟って、酷く儚げに映って見える
その涙こそが、
櫻井の真の姿なのだと気付いた
静まり返った空間
しばらくの間、櫻井を見ていたユウさんも、
また、俺の首筋に顔を埋め
……思わぬ再開に俺は
「あぁっ!」
突飛な声を上げてしまう
すると、 踵を返した櫻井は、部屋を飛び出し、
ドアの音が、バタンと大きく響いた
肌に吸いつく唇が、
痛みを刻む
だけど、 不意に感じた違和感に、視線を落とした
どうして、
どうして、俺らは……
こんな選択しか出来なかったんだろう
俺の胸の上には…
櫻井と同じ顔した、ユウさんがいた
俺が今までずっと見ていたものは……
憎しみやら歪んだ感情が生み出した幻想だったのか……
急速に冷えてく身体を実感しながら
ゆっくりと、瞳を閉じた
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