第10章 夢見る頃を過ぎても
【哀しい色】
「……誰だろうねぇ」
クスッ…、と口端で笑ったユウさんはそう言うと、
俺の身体から起き上がり、
迷いなく、ベッドを降りた
モニターに映った顔を確認すると、直ぐに解除し
玄関へと向かう
廊下を歩く足音
ガチャッ…と鍵を開ける…
そして、部屋のインターホンが鳴る前に
俺のいるベッドに戻って来た
「いつもみたいにちゃんと鳴くンだよ?」
同時に愛撫が再開され、唇を塞がれる
「ンッ……っふ…」
何度も高められた身体は、直ぐに熱を帯び……
自然と、甘い息が漏れる
それでも、意識は開いたドアの奥に続く玄関だけに向けられていた
静かに響く、
……ドアの音
ドクドクと激しく鳴る心臓
近付く足音
見えた人影
足元から上に……、ゆっくりと辿ると
そこに立っていたのは、
「……っ」
櫻井だった
俺と……視線がぶつかる
だけど、それは……
ユウさんの動きで、直ぐに閉ざされた
「ぁ…っ!は‥やっ‥ぁ」
中断されないまま、
当たり前に続く行為は……
自分が快楽を得るためでもなく、
俺をイかせる為でもない
ただ、
見せつける為だけ‥‥
身震いした
櫻井が…息子が見てるのに?
迷いなく俺を抱くユウさんが怖い
同時に……
歪んだ櫻井の表情が、
哀しい色に染まって見えた
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