第10章 夢見る頃を過ぎても
【初恋に捧ぐ】
「可愛いよな…“しょーちゃんしょーちゃん”ってさ」
「……」
俺に対する嫉妬心で雅紀を囲えよ
借金も無くして、店も辞めさせろ
見せ付けるくらい愛してやれよ
お前だけで独占したらいい
「でもさ?俺ら、
付き合い始めたばっかだからさ、そっちはまだ早いだろ」
計算通りだな
「上手く雅紀とヤれるように練習しとかないとね」
ドンと突き飛ばされ、フローリングに、そのまま身体を押さえつけられる
俺に跨がり、シャツを思い切り破り開いた櫻井は
肌に付いた無数の痕に、目を見開く
少しの間の後
「…っつぅ!」
胸元に痛みが走り‥‥
爪を立てられたのがわかった
赤い痕と重なる爪痕
それこそが、櫻井のもうひとつの復讐の理由
……だろ?
お前は、いつかの俺と重なる
母親は愛してくれないと諦めながら
開くわけのないドアを、いつまでも待っていたガキの頃
お前の父親に愛される俺を恨むぶんだけ、
雅紀を愛してやってくれ
いたぶるような扱いに確信しながら
俺が雅紀に出来る唯一を、全うした
約束したもんな?
オマエの初恋を奪ったんだから、俺の初恋も貫くってさ‥‥
・