第10章 夢見る頃を過ぎても
【心理戦】
ーニノsideー
電話を切り、布団の上に投げ出すと
そのまま体を倒し
天井を見上げた
規則的に埋め込まれた間接照明を消すと、
光を失った部屋は、月明かりだけに照らされる
着ていたシャツのボタンを1つ余分に外し
ムスクの香水を少し振りかけた
テーブルには、開いたボルドーを立て、グラスに少しだけ注ぐ
ま、身体中の痕だけでも充分だけど
念には念を‥‥ね
俺の推測が正しいなら、櫻井は俺への当て付けで雅紀と付き合い始めた
だから、俺に対する行為が無くなるわけない
携帯が鳴り、到着を知らせる
ドアを解除し、
櫻井を待った
「お待たせ」
ワザとらしい笑顔を見せたヤツは
リビングに足を踏み入れた途端
明らかな光景に、顔色を強ばらせる
「父さん来てたんだ?」
ニヤリと笑い、挑戦的に見つめながら答える
「いきなり…ね。いつも、こうなの」
「……」
「だから、もう外に出る体力残ってないからさ?……来てくれて助かったよ」
櫻井の復讐は
母親の無念を晴らす為
だけど同時に‥‥
「いい度胸だね?父さんとヤった後に俺にも相手させるって?」
「何言ってんだよ。俺は雅紀の事聞きたかっただけだよ?」
頭のキレる櫻井が、少しでも苛立てば
その冷静さも半減されんだろ
「雅紀に聞いたよ。
付き合うんなら、傷つけないでやれよ。
気付いてんだろ?俺の気持ち」
「今さら…」
「正直、お前と付き合うって聞いた時、嫉妬したよ」
鼻で笑い、緩んだ口元が
視界の端に写った
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