第10章 夢見る頃を過ぎても
【peace of mind】
ー櫻井sideー
放し飼いにしてても、
従順に飼い慣らされたペットは
キチンと、帰るべき場所に帰って来る
「何か用?」
教えておいた番号に、自ら掛けてくる……
『……会えるか?』
可愛い俺のペット
会いたい理由なんて、どうせ雅紀の事聞きたいだけだろ
「いいよ?…店に行こうか?(笑)」
『…雅紀、仕事は…?』
「あぁ。今日は出勤してんじゃない?」
『……じゃあ、他で会えないか?』
「そう?何処でも構わないけど」
ふざけた会話だな
これじゃ、逢瀬する恋人同士みたいだ
『俺の、……家でもいいか?』
「お前の…?」
意外な提案に驚く
アイツの性格的に、自分のテリトリーを荒らされるのは心外なハズだ
「ホテルでも用意してやるけど?」
『お前とホテル…?嘘だろ
わざわざ金使わなくていいよ。その分、借金どうにかしろ』
確かに、
わざわざ、ホテル用意すんのも馬鹿げてんな
「いいよ?お前んちで……」
考え無しで誘ってる訳ないと思うけど
雅紀の事、きちんと刷り込んでおかないとね
俺以外には、
時間になると帰る家政婦と、運転手だけが存在する家
自分の書斎で、電話を切り
ボードに刺した二宮の写真を見入る
一見、ガキみたいな風貌のコイツが
父さんや客を、虜にしてんだからな
油断しちゃいけない
「車出してくれる?」
俺が合図すると、運転手は黙ってエンジンを掛けた
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