第10章 夢見る頃を過ぎても
【スターゲイザー】
ー櫻井sideー
校門脇にある桜の木
花は散り、青々とした新緑が風に揺れる
穏やかな光景の中、
……俺の"コイビト"を待つ
次第に大きくなる人影
手を振り笑顔で応えた
「しょーちゃん!待った?」
「…いや。早かったね」
並んで歩き出し、
その横顔に、神経を集中させた
"約束"は果たせたのか
ホントに、……言えたのか?
「今日はバイトは?」
「うん。行くよ」
ニコリと笑顔を俺に向け、そのまま前を向くと
真っ直ぐに歩き出す
後ろめたさも感じられない、颯爽とした横顔
嘘も言い訳も下手なお前だから、それだけで約束は果たされたと知った
大事なニノに、俺との事を伝えても
きっとアイツは、雅紀を切り札にしてる、俺の策略だと思うだろう
二宮からしたら、
雅紀は前から、俺を想ってる事になってんだからな……
雅紀の言葉が、いくら不自然でも
少なからず動揺したお前は、俺にとって都合よく解釈してくれるだろう
「しょーちゃん、寄り道しよっか」
「は…?バイトあんだろ?」
「ちょっとだけ…ね?」
悪戯な笑顔で、イイコト思いついたって顔してるけど……
大したことないんだよね。毎回(笑)
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