第10章 夢見る頃を過ぎても
【passage】
ーニノsideー
暗い照明の下
偽の笑顔で駆け引き
真実なんていらない
非現実な世界
欲望と理想を追い求め
買う側と買われる側
シンプルでわかりやすい
かつ合理的
俺みたいな人間にはぴったりの場所だと思ってた
「カズナリ、ひさしぶり~」
相変わらず癒やしの笑顔を向けるサトシに、少しだけ肩の力が抜ける
「春休みに働き過ぎで体調壊した?」
「…まぁ…そんなとこ」
適当に相槌打って笑うと、サトシも合わせて笑う
「元気になったんならいいけど…もう来ないのかな~なんて」
「来るよ。金いるんだって」
放課後になると、俺を拘束してたヤツが今日は止めなかった
けど、
昼休みから、明らかにおかしい
櫻井の意味深な笑顔が気になった
「……なぁ、サトシ?今日ってさ、マサキ、来てる?」
「マサキ?…なに、知り合い??」
意外そうに目を見開いて、
……だけど、勝手に整理ついたのか、急にニマニマし出した
「カズナリとマサキがね。ふーーん。
どこか似てる気がしたんだ、ふたり」
今度は俺のが考え込む
雅紀と俺が…似てる?
「なに難しい顔してんの」
「イヤ、別に」
真っ直ぐで純粋なアイツと俺じゃ、……真逆だろ?
「マサキ、今日は会ってないよ。
今の時間に来てないなんて珍しいかも」
やっぱ、櫻井と何か?
「サトシ、俺…今日はちょっと、」
予約が入ってたから、ペナルティーがイタいけど……
どうしても気になって、
ネクタイを緩めた時、ちょうど黒服が待機室のドアを開けた
「カズナリ、客」
チッと舌打ちして、時計をみると、予定より30分も早かった
どんだけ張り切ってんだ
サトシに『行ってくるわ』と目で合図して
仕方なくネクタイを締め直し、個室に向かう
ノックをし、
開けたドアには‥‥
「ご指名ありがとうござい……あ、」
「ひさしぶりだね。カズ」
そう言って、ユウさんが笑ったけど
それには全く、温度を感じられなかった
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