第10章 夢見る頃を過ぎても
【フェイクファー】
ー雅紀sideー
「しょーちゃん!一緒に帰ろ!!」
「……あ、ああ」
少し驚いた顔して、しょーちゃんが頷いた
バイトバイトって、最近じゃ慌てて帰ってたけど
俺が居なくなってから、ニノと何が起きていたんだろう
ふたりきりになんて出来ないよ
「バイトは?…時間いけんの?」
「うん。融通利いてもらえるからね」
『そーなんだ』って、つぶやくけど、
しょーちゃんは"どこまで"知ってんの?
あの様子からしたら、ニノの裏のことも知ってそうだし……
もしかしたら、俺のことも全部知ってる…?
まさか、ニノは……知らないよね……
俺があの店で働いてること知らないよね?
俺の知らない所で……何が起きてんの?
「どした?」
「ううん!……あれ、ニノは?」
「さぁ?先に帰ったんじゃない?」
確かに、
見渡した教室にニノはいなくて
ひとこと、バイバイくらい言ってくれたらいいのに
‥‥なんて思いながらも、
しょーちゃんが自分の側にいる事で安心してた
「雅紀…好きだなんて、どういうつもりで言ったんだよ」
少し照れたように、歩きながら言うしょーちゃんは
視線を合わせ、俺をジッと見た
何もかもを見透かされそうで
ドキドキしながら、出来るだけ明るく話す
「だって、言いたかったんだ。
好きだなぁ、って思ったらさ…」
「ふうん」
ふいっと目を逸らし、
少し早足になったしょーちゃんに歩幅を合わせる
翔ちゃんの裏の顔知ったのにね
やっぱりまだ……信じらんない俺もいる
だから、罠みたいなこと仕掛けた自分自身に、罪悪感があるのも確かだった
「久しぶりにお前んち行こうかな。ゆうにも会いたいし……いい?」
「……うん」
「バイト、融通利くんだよな?」
「う、ん」
「じゃ…今日は休めば?」
にっこりと笑みを浮かべるから、
その優しい顔に戸惑いながら、……頷いた
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