第9章 BAD KIDS
【ウラハラ】
ー雅紀sideー
「どしたの?なんかあった?」
控え室から戻り、
帰り支度をしている俺に、サトシさんがそう声を掛けてきた
「え…?別に、なんにも‥‥」
ソファーでタバコを吸うサトシさんは、俺の顔を見てニヤニヤしてる
「なんか、浮かない顔してんな~って」
確かに…、考え事してたけど
「あの、サトシさんは今日も、忙しかったですか?」
気になってた事を聞いてみた
「ん~、まあまあかな。一応、固定客いるしね」
「そうですよね…」
そうだよね
サトシさんは、ここじゃ人気No.1だって聞いた
俺なんかと比べる事自体間違ってるよね
「俺、最近……ほとんど指名なくって」
「へ?…そうなの?」
「はい。待機して終わりってパターンが続いてて」
パーカーを羽織り、着替え終わると、
サトシさんの向かいのソファーに腰を降ろした
「……稼ぐつもりで来てるから……」
「う~ん。なかなか競争率激しいしね?
……マサキはまだ日も浅いし、固定客もついてない。そのうち忙しくなるよ」
「……はい」
そうだよ
考えが甘いんだよね
思い通りになるわけないんだよ
もっと頑張らなきゃ
「でも…さ?」
内心、気合いを入れた俺を見透かすように
サトシさんは相変わらず笑ってる
「イイ顔してるよ?」
「え?」
「いつも仕事の後、すっげー辛そうだもん」
「ははっ…、そりゃ体力使いますから」
笑った俺に、
サトシさんは何故か目を細めて
「お前、笑ってんのが似合ってるよ」
タバコを灰皿に押し付けながら、フワッと優しく笑った
「……なんか、テレますね(笑)」
確かにこの仕事は、お金の為だって割り切ってるつもりでも、
身体的にも精神的にも負担が大きい
仕事がひとつ終わる度、
同時にゆうや母ちゃんを思い出して
やっぱり、苦しくなった
身体が黒いモノに侵食されてるような
少しずつ壊れていくような
どうしようもない罪悪感
それでも、ニノを思うと
そう感じる事が卑怯な気もして
……怖かった
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