第1章 終わりの始まり
【運命の人】
バイト先の近所の花屋
店の前を通りがかった時
その子が、バラを活けたバケツをぶちまけたんだってさ
こんな真冬に水引っ掛けられて‥‥ 制服だって濡れたのに?
「もうね?ひと目でこの子だーって思ったの」
おにぎりを頬張りながら
ほっぺたにご飯粒付けて何言ってんだか
「‥‥で?」
「でねっ♪お詫びにってバラの花くれたの!可愛くない?」
「お詫びって、俺ならクリーニング代ふんだくるけど」
「うん。出すって言ってくれたんだよ?でもね、俺が断ったから」
「‥‥だから、バラ?」
「そっ♪」
一輪のバラをうっとりと見つめる相葉
おそらく、バラ越しに運命の人だっていう彼女を思い浮かべてんだろう
「そんで、なんか展開は?ひと目惚れなんだろ」
「‥‥てんかい?」
「次会う約束とかさ」
コーヒー牛乳を飲みながら、相葉を見ると
みるみる頬を赤く染めて‥‥
「出会ったばっかじゃん!なんかあるわけないでしょ」
「そう?」
「そうでしょ。普通でしょ」
ぶつぶつ言ってっけど
意外だな
いつものテンションで
『好きになっちゃったんだー』なーんて、行くんじゃないんだ?
「あぁ~今日も会えるかなぁ」
いっつも、パン3つは軽く食べて
そんでも足んないって、俺の残した分まで奪ってんのにさ
バラの花を見つめて
物思いにふけて
「あ~、俺、胸いっぱいで食べらんない!‥‥ニノにあげる」
「いらねー」
歯型のついた食いかけのおにぎりなんて、渡されても迷惑だっつーの
バラを宙に翳し、
運命の人だと
可憐な花に憧れを抱く
あとから知った
ピンクのバラの花言葉
"上品"
"気品"
"美しい少女"
見た目だけの幻想だ
"恋の誓い"
お前は永遠だと、
その想いに全てを託すの?
バカげてるよ
恋や愛なんて
ちっともリアルじゃない
・