第9章 BAD KIDS
【君と僕の最小公倍数】
ーニノsideー
昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴り響き
一番に反応した雅紀が、ワザとらしく声を上げた
「教室戻らなきゃ!」
きっと、
思わぬ状況に落ち着かなかったんだろな
微妙な空気が、その一言で動きを持つ
俺と目が合っても、
不自然に逸らされたし
それでもアイツの瞳に 、
恐れてた嫌悪感は見いだせなかったから、それだけは安心してた
「じゃ…行こうか」
俺の視線に櫻井は、口端で意味ありげに笑う
雅紀は慌てて立ち上がると
櫻井の後を追い掛け、教室から出ようとした
だけど
ドアの前でいきなり立ち止まり、俺に振り返った
そして、思いついたワケじゃなく
漸く覚悟したかのように言葉にした
「あのさ」
……掠れた声が響く
「ニノ、俺ね……大丈夫だからね」
ポツリと
紡ぐように発せられたひと言に
雅紀の気持ちが、溢れてた
真っ直ぐに俺を見る瞳が潤んで見えた
だから、
アンナコトすんなって言いたいんだろ?
じゃあ……オマエは?
俺のが……言ってしまいたい
「……」
「ニノ?」
「なんでもない」
なんでもないよ
オマエが辞めるよう、
あんな事しないでいいよう、どうにかするから
「雅紀、行くよ」
廊下から呼ぶ櫻井の声
その声に、緊張した雅紀の顔が綻んだ
ヤツの真実の顔を、雅紀は知らない
「しょーちゃん、ゴメンゴメン」
俺の事知った時、辛かったろ?
だから、自分を追い詰めて
自らあの場所に飛び込んだんだよな
オマエが笑わなくなると
俺、困るんだ
俺の世界は、
一筋の光さえ存在しなくなるから
闇に覆われてしまったら
きっともう動けなくなる
だから、困るんだ
オマエはいつも、笑っててよ
たとえ、俺の側にいないとしても
・