第9章 BAD KIDS
【mutual sympathy】
ー雅紀sideー
久しぶりの3人で過ごす時間は
やっぱりスゴくぎこちなかった
何か話そうって思うのに、気の利いた会話なんて浮かばないし
ケータイゲームを黙々とやるニノと、
挿し絵なんてなさそうな本を読んでるしょーちゃん
食べ終わったおにぎりのゴミを丸める音さえ、神経使っちゃう
2人を邪魔しないように……って、
スゴく気にしてたのに、
左肘がしょーちゃんの置いてた缶コーヒーに当たって
カランカランと音を立て……床に転がった
「わわっ!ごめっ…」
「大丈夫?」
「なにしてんだよ」
しょーちゃんとニノの声が順に聞こえて、慌てて缶を拾った
まだ飲みきってなかったみたいで、古い床にみるみる染み渡る
「えっと…ティッシュなかったっけ」
入れた覚えもないティッシュを探して、ポケットをさぐった
「あ~あ、仕方ないなぁ」
しゃがみ込んだしょーちゃんが、キレイなハンカチで拭いてくれる
「わ!それっ」
「別にいいよ。ハンカチくらい」
しょーちゃんが優しく笑ってくれて…
妙な緊張感が薄れるのを感じた
「もう…春休みだね。
雅紀はゆうくんとどっか行かないの?」
「あ!そか…春休みかぁ。母ちゃんも、だいぶ調子いいし…」
すっかり忘れてた
学校、休みなんだ
「雅紀はなんか予定あるの?」
「俺は……多分、バイト……かな」
休み中に、出来るだけ頑張んなきゃ
「そか…またさ?
ゆうくんの相手なら俺らするし。……な?二宮君」
「……ああ」
ケータイから目を離したニノが、頷いて俺を見た
しょーちゃんみたいに、
優しい笑顔を見せたワケじゃない
ちょっと面倒くさい顔して
仕方ねぇなって
だけど……
ホントはスゴく優しいの、俺は知ってる
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