第9章 BAD KIDS
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『ゆう』で、二宮が気付けばいいな~なんて
期待を込めて
ゆうに連絡して、雅紀の話で煽る
相談に乗ってくれる、優しい和兄
さて……と
成果はあったかな
「櫻井、ちょっと話あんだけど」
放課後
疎らに人が残る教室
帰り支度をする俺の元に二宮がやってきた
雅紀も帰ったし、グッドタイミングじゃん
「また来てくれたの?」
疑ってんの?
良かったよ。お前が何も気付けないバカなら、ゲームにならない
「雅紀のこと?それなら俺も、知らないって」
「……嘘だろ?」
「?…なに、怖いって!」
「ホントは知ってるよな?…何か」
覗き込むように俺を睨んだ二宮の瞳に
武者震いがした
ああ
やっと、
堂々と始められる
自然と……口元が緩んだ
「だから、俺が知ってんのは、ゆうといる事だけだって」
「お前、まだ誤魔化す気…」
「…ゆうと、ナニをしてたかは知らないよ?」
ニヤリと笑った俺に
二宮の表情が一段と険しくなった
「お前……まさか」
「やっと、気付いた?」
笑いながら机に座り、ヤツを見据えた
「雅紀はゆうと会ってんだよ。よく知ってんだろ?……ゆうの事」
「……ハッキリ言えよ」
「急かすなって」
ちゃあんと気付いたクセに
「ご主人様のフルネームも知らないなんて…バカ犬だな
……漸く本音を出せる
興奮状態なはずなのに、驚くくらい落ち着いてる
そうか、目の前の二宮が
必死に冷静を取り戻そうとしてるから
その姿が可笑しくて
哀れで、滑稽で、
俺自身が写し鏡にならないよう、冷静になれんだな
「ゆうさん…って呼んでんだっけ?
櫻井悠、……俺の父親だよ」
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