第9章 BAD KIDS
【嘯き】
ー数日後ー
計算通りに、ヤツは現れた
俺の元に探りを入れに来るだろうなって、思ってたから
酒屋のバイトを辞め、
ゆうくんにまで雅紀が内緒にしてる事
気になるよな
教室にいた俺に、二宮が近付いて来る
教室を覗いた時から、その姿を捉えていたのに
「え?…どしたの?」
如何にも驚いたような素振りを見せ、
目を丸くして、わざとらしい声を上げた
「アレだ。…やっぱ、どうかと思って」
本題に入りにくいのか、
二宮は、机に500円玉を置いて
「頑なだね(笑)」
「お前に貸し作りたくねぇんだよ」
「……ま、いいけど。で?」
いつまでもボケてらんねぇよ?
頭を掻きながら、言いにくそうにボソボソと話す二宮に
表情とは裏腹に苛立ちが増す
お前のキャラじゃねーよ 。ハッキリ言えよ
「んもぅ、素直じゃないんだからぁ~ニノはぁ」
「お前、ざけんな」
「あはは。ゴメン!
…俺もそれ、気になってんだけどね」
「……そう」
「夜はゆうと一緒だろ。昨日も電話したら一緒だったし」
父さん、まだ雅紀んとこ通ってんだもんな
アイツ…そんな"具合"いいワケ?(笑)
「そっか…」
「仲いいしね」
なんせ、ヤッてんだから
「…まぁな」
納得したように頷いてるけど…
『ゆう』って、やっぱり俺からのワードじゃ、連想出来ないか…?
「じゃ、二宮くん。俺帰るけど…、一緒に帰る?何なら家遊びに来る?」
「……冗談だろ」
「冗談って(笑)
ウチで可愛い犬飼ってんだけど、見に来ない?」
「行くかよ」
お前が一番欲しいもんなのにな
可愛いよ~
父さんがしっかり躾したから、何でもいうこと聞くし
お前が来るなら、リボン付けて見せてやってもいいよ
「じゃな」
「ホントツレナイね。じゃ、またね」
残念
せっかく会わせてやろーと思ったのに
二宮の背中を見送って
込み上げる笑いを耐えきれず
身体を折り曲げ、ひとり笑う
笑い声が
誰もいない教室に、静かに響いた
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