第9章 BAD KIDS
【縷縷】
「あ…もしもし。俺」
そろそろ躾も終わった頃だろうしね
我が儘聞いて貰おうか
滅多に連絡を寄越さない息子が
時々掛けてくる電話くらい、ちゃんと相手してよね
「今から会えない?大事な話あるんだけど」
机に広げた書類の山
数え切れない程の写真
父さんと親密に写る二宮
父さんの車に乗った二宮
あの店でのスーツ姿
仕事中の卑猥な顔
調べて出て来た過去の写真まで……
「かわんねぇな…」
中学生の頃か… ?
昔の写真を手に取った
…今でも童顔だけど
いや、この頃のが尖った目してんな
数年前の写真なのに
やたら傷んだ一枚
アイツはこの写真の存在さえ忘れてんだろうな
二宮と同じ瞳をした女の写真を横に並べ……
ふっ…と笑いが零れた
いつまで続くのか
どれだけの人が巻き込まれるのか
まだ始まったばかりだ
母さん、見ててよ
俺が… ここで終わりにするから
「欲しいものがあるんだ」
「…なに?」
「飼いたいんだ♪ペット!」
「それなら好きな…」
「もう選んでるよ。父さん、たくさん飼ってるよね?それ、分けて欲しいんだ」
「なにを…言ってる」
「あ?安心して?…ちゃんとエサは与えるし、躾だってキッチリやるよ」
「……」
「特注の首輪つけて、大事にするから♪」
なに…難しい顔してんだよ
何でも俺の我が儘叶えてくれるじゃん
気持ちがない代わりに、カタチだけでもってね
望んだモノは、何だって与えてくれる
「なんの話をしてる?」
「しらばっくれないでよ。ペット!飼いたいんだって♪」
「マサキって言うんだけど、飼ってもいいでしょ」
口端でクスリと笑う
ペット一匹くらい、分けてくれたらいいじゃん
「ちゃんと可愛いがるよ。大事に飼うから」
だって、このコイツ飼ったら、もれなく一匹ついてくるよね?
雅紀を可愛がれば可愛いがるほど、
アイツはどんな顔すんのかな
俺はね?
それを、目の前で見たいんだよ
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