第9章 BAD KIDS
【閏秒】
「…そうなんだ。ビックリしてさ。
ゆうくんは何にも聞いてない?……そう」
『雅紀が酒屋のバイトを辞めたらしい』
恰も知ったばかりの出来事のように、ゆうくんに知らせた
何も出来ないゆうくんは、必ず二宮に相談するはずだ
きっとヤツは心配して、雅紀に尋ねるだろう
『どうして辞めたのか』
『辞めたなら、夜は何処に行ってるのか』
二宮に問い詰められたら、
嘘が苦手な雅紀は、どんな顔するだろうね
昨日もオシゴト頑張ったのかな?
いつもの空き教室
目の前には、机に伏せて眠る雅紀
ガタガタと軋んだ音を立て、ドアが開いた
難しい顔をした二宮が雅紀を視界に捉え
次に俺を見たから、苦笑いで応えた
ゆっくりと近付き、雅紀をジッと見下ろしてる
「遅刻して来たと思ったら、後は殆ど寝てる。
俺が起こして…引っ張って来たんだ
顔色悪いし、痩せたよね?…まさかさ、食べる物にも困ってんのかなって」
さっき買っておいたパンを指差すと、
二宮が覗き込んで…、また雅紀を見た
「起こして、食べさせなきゃって…」
肩を揺らして、起こそうとしてる
「雅紀っ!メシ!オマエの好きなの、櫻井が買って来たってよ」
余程昨日は頑張ったのか、なかなか起きなそうにないな
「早く食わねーと、俺が食うからな~」
ふざけた口振りで更に揺さぶると
漸く、のろのろと顔を上げた
その顔は、やっぱり窶れてる
だけど、雅紀は
俺らと目が合った瞬間に、笑顔を見せた
かえって痛々しいそれは
二宮の表情を
険しくさせた
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