• テキストサイズ

真昼の月 真夜中の太陽 【気象系BL】

第9章 BAD KIDS


【儚いひと】



ー櫻井sideー






「お父さんはね、忙しい人だから」



家にいない父親を、
不思議に思い、その理由を尋ねた


優しい母は
微笑み、頭を撫でてくれた


それを、素直に聞き入れていたのも幼い頃だけで、
他に帰る場所があることにも気付いてた


キャッチボールをせがむ気もなければ
一緒に食事しようとも思わない


ただ、身体の弱かった母が
切ない顔を見せる度、胸が苦しくなった


母を喜ばせたくて、いつも笑って
勉強だってスポーツだって頑張ったよ


父の代わりに、俺が頑張らなきゃって…


だけど、

俺にとって唯一だった母は

突然、俺の前から消えた









表向きは病死だ

だけど、不自然に揃えられた俺の新しい服や

俺に託す丁寧な手紙

いつから準備されていたのか、
箪笥の引き出しには、母の愛情で溢れていた


遺される俺への、せめてもの償いだったのかもしれない






母はきっと、死を選ぶ事で、

囁かな抵抗をしたんだと思う



最期まで、父の愚痴を言わない女性だった








喪服に身を包み、

亡骸になった母に

父は、何を思い手を合わせたか


取り乱すことなく
涙一筋も流さない父親からは、何も感じる事は出来なかった





母の最後の訴えは、
きっと届かなかっただろう




自分を追い込んだ罪を背負い、生きて貰おうと…







葬儀が終わると

父は直ぐに、何処かへ消えた









母さん、負けだよ

あの男は自由になれたんだ







だけど、

それはあまりに切ないね

愛されなかった母と

愛されなかった俺



代わりに俺が、恨んでやるから



それで少しはラクになれる?







探偵を雇い、調査結果に上がった人物

あまりに母が不憫で

自分さえ、同じ血が流れてると思ったら

震えが止まらなかった







調査書と数枚の写真


こんなあどけないガキが相手だと?


父親とキスしてる、だなんて


お前がどんな人生を歩んで来たかなんて知らない 。知りたくもない


ただ、お前の存在が、
俺と母さんを不幸にしたことだけは、思い知らせてやるよ



/ 308ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp