第1章 終わりの始まり
【空気】
相葉の生徒手帳を拾って、お礼にって、焼きそばパンを貰った(奪った?)のは記憶に新しい
‥‥それもそのはず
昨日の話だからだ
昼休みに入ってすぐ
騒がしくなった教室を出て、"休めそうな場所"を探してた俺の前に
ヤツはいきなり現れた
「焼きそばパンのせいでさ‥‥」
涙目で、深刻な顔してっけど
コイツ‥‥
「ニノに焼きそばパン奢ったからさ~。俺、金ないんだって!」
オイオイ
いつ、誰が、奢ったって!?
「弁当は朝食ったし、腹減った!」
「‥‥だから?」
「みてよ!俺の全財産」
ゴソゴソと、右手を突っ込んだポケットから
『ほらね!』なんて、何故か得意気に掌を広げて見せた
「‥‥だから?」
ひと目でわかる
25円‥‥て
「パン1つも買えないんだって~」
「お前な‥‥」
「今日はニノの番だから」
「知るか!」
「あーっ!焼きそばパン売り切れちゃうって」
馬鹿力にグイグイ肩を押され
何故か購買部に向かう足取り
「俺ね!コロッケパンも好きだから。気にしないでいいよ?ニノ♡」
「気にしてねーよ」
昨日と全く同じシチュエーション
廊下の突き当たり
窓際に男2人寄りかかったまま、パンを頬張る
違う事と言えば
食べてるパンが、焼きそばパンからコロッケパンに変わった事ぐらいだ
(焼きそばパン争奪戦に負けた)
ムスッとしながら、それを食べ終わると
無理矢理奢らせたくせに、3つも買い込んだ相葉は
悪びれる様子もなく、次々に袋を開ける
「明日はさ‥‥俺が」
「奢んなくていいから!金払えよ」
「えー?」
「明日、480円な」
「明日ぁ?‥‥ケチだな、ニノは!」
「25円に言われたくないわ」
あひゃひゃと笑う相葉
そういや
この変な笑い声
教室に居るときも、遠くで聞こえてた気がする
意識しないうちからコイツは
自然と俺の中に入って来てたんだな
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