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真昼の月 真夜中の太陽 【気象系BL】

第8章 僕達の失敗


【水のない水槽】





ー雅紀sideー





身体を揺すられながら、

朦朧とした意識の中






誰かが、

俺を呼んだ気がした







そんなの、ただの幻聴に決まってるけどね


閉じ込められた箱の中で




こんな醜い俺を、
名前で呼んでくれるような人に見られたとしたら、




俺はもう二度と、その人とは会えないかもしれない




きっと、

ニノも同じだったはずだよね

俺に知られたくなんかなかったよね





仕事で肌を重ねる度

痛いくらい、ニノの想いを知った









クタクタの身体を起こして、
ドアを開けた部屋には、客の姿はどこにもなかった


こんな場所にいるのを知られたくない客は、
鑑賞だけして、顔を合わせない人もいる






俺自身も、その方がホッとした


"素"に戻った瞬間を見られるのは、やっぱり慣れない







「お疲れさん」




シャワー室に向かおうとした俺に、サトシさんの声が響く




「……あ、お疲れさまです」




サトシさんは今から仕事なのか、
ネクタイを結びながら、言葉を続けた




「あんま無理すんなよ?そんな自分イジメてどーすんの?」

「え…?イジメて?」




スッとソファーから立ち上がったサトシさんは、


俺の頭にふわりとタオルを掛けた




「ガキが強がって…
オトナの俺だってね。この仕事はハードだよ」

「……」

「弱音吐いてくんなきゃ、立場ねーよ」




目尻の下がった優しい眼差しに、


……何かが込み上げてくる




俺は泣く権利もないのに


唇を噛んだ俺に、
サトシさんは背中をポンと叩いて言った





「早くシャワー浴びといで」





それは、

「泣いといで」って言われたみたいで



ふわりと心が、軽くなった








強めに捻ったシャワーを浴びながら、
滲みた傷口に、自分が怪我していたと気づく


行為の最中についたものかな…


苦笑いしながら、滲みた腕を見つめ




「いっ…てぇ…な」




そのせいにして、泣いた







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