第8章 僕達の失敗
【人間・失格】
「ざまぁないな。二宮」
崩れ落ちた俺に、しゃがみ込んだ櫻井は…
俺の顎を掴み、無理矢理目線を合わせる
「なぁ?今、どんな気分?」
ニヤリと笑い、俺を見据える
「感激して何も言えない?
好きなヤツのあーんなトコ見れたしねぇ?」
チラリと雅紀を向いた櫻井は、相変わらず笑ってる
「…なん、で……?
お前、アイツと仲いいだろ…」
雅紀は、
お前の事想ってんのに…?
「仲いいよ。
たださぁ、仕方ないじゃん。
お前の大事なヤツが雅紀だっていうならさ」
仕方ない…?
俺の…?
「お前にわかる?親父が愛人作ったって…
相手が若い女ならまだしも、俺と歳も変わんないガキだよ?」
俺とユウさんの関係を恨んで…
アイツをこんな目に?
櫻井の手を払い除け睨んだ
「だからっ!なんで雅紀なんだよ…っ!」
「なんか勘違いしてない?
雅紀がやってんのはさ、俺のせいじゃない」
「…え」
「お前の代わりに働いてんだよ。大事なトモダチの身代わりにな」
身代わり…?
俺の…?
「純粋で優しいアイツはさ、
お前が自分の為に身体売ってるってね?…自ら選んだんだよ」
「俺の…せい?」
「そうだよ。俺が無理矢理やらせてんじゃないからな」
立ち上がり、
ガラスの向こうを眺めながら話し続ける櫻井
「お前が昔っから身体売ってんのも知らずにね…
ねぇ…教えてよ?
お前はどうしたら苦しい?
……絶望する?泣き叫ぶの?」
「お前…」
「俺はね?それがみたいんだ。とりあえず……」
雅紀の悲痛な声が聞こえる
怖くて…見れない
「お前はさ、自分が傷つくのなんか平気だろ?
だから決めたんだ」
「櫻井…?」
「雅紀を地獄に落としてやろってね…
覚悟して?二宮君」
向けられた冷たい瞳に背筋が凍った
俺は知ってる
淡々とした表情に少しの優しさも無いことを
紛れもなく櫻井は、
ユウさんと親子なのだと
確信した
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