第8章 僕達の失敗
【黒】
とりあえず冷静になれ
全てが憶測だ
なぜ嘘をついたのか…
感情だけに気を取られたら見失ってしまう
上手くはぐらかされないよう、しっかりしないと
「櫻井、ちょっと話あんだけど」
放課後
疎らに人が残る教室を覗いて
帰り支度をするヤツに声を掛けた
雅紀が先に帰ったことも確認したし…
「また会いに来てくれたの?(笑)」
クスクス笑ってるけど、
その笑顔は…ホンモノか?
「また雅紀のこと?
それなら俺も、知らないって」
「……嘘だろ?」
「…なに?その顔怖いって!」
「ホントは知ってるよな?…何か」
櫻井に近付き、覗き込むようにその瞳の奥を見つめた
すると、
動揺した素振りを見せてたヤツが
微かに口元を緩めたのを、俺は見逃さなかった
ドクンと刻み出す鼓動は、徐々にスピードを増す
「だからぁ、俺が知ってんのは、ゆうといる事だけだって」
「お前、まだ誤魔化す気…」
「…ゆうと、ナニをしてたかは知らないよ?」
ニヤリと笑った櫻井に、憶測以上の何かに気付く
「お前……?」
「……やっと、気付いてくれた?」
ククッ…と笑いながら、櫻井は机に座ると、淡々と話し出す
「雅紀はゆうと会ってんだよ。
よく知ってんだろ?……ゆうの事」
「……ハッキリ言えよ」
「急かすなって」
握り締めた拳が震えるのを片手で押さえ 、櫻井を睨んだ
「ご主人様のフルネームも知らないなんて、
バカ犬だな(笑)」
最初にコイツと出会った時に感じた、
好きになれそうにない感覚は、やっぱり正解だった
「ゆうさん…って呼んでんだっけ?
櫻井悠は、……俺の父親だよ」
・