第8章 僕達の失敗
【白】
ー雅紀sideー
ウイスキーの入ったグラスを差し出し
黙って…動きを目で追った
何故、まだここに来てくれるのか
「なんて瞳してるの?なんで来るんだって?」
「……ニノが働き出したのは俺のせいだし。
俺にまで気を掛けてくれなくていいです」
「えらく自分を追い詰めるんだね」
当たり前だ
ニノが、どんな思いで仕事してきたかと思ったら…苦しくて苦しくて…
酷いことをされてないと、ダメな気さえする
「俺の事はいいですから。放って置いて下さい。お願いします」
俺に優しくする人なんかいらない
「こんな風に会いに来られると、迷惑です」
俺の言葉にユウさんはため息をついて、悲しい顔を見せた
「どうかしてるね。
君があんまり純粋だから、後悔してるんだ」
「ユウさん…」
「ホントはカズが辞めた時点で、顔を出す気はなかったんだけどね」
グイッと傾けたグラスが空になり、ユウさんは俺にキスをした
触れるだけの優しいキス
微かなウイスキーの香りが唇に残る
「僕にはカズが居ないと駄目なんだ。ごめんね」
「…いえ」
叔父と甥の関係以上の何かがあるのかな
何となく、気づいてはいたけど ……
ニノを大事にしてくれるのなら、問題ないよね
そのまま、俺を拘束出来る時間を待たずに、ユウさんは部屋から出てった
氷の溶けきった水のグラスを手に取り、すべて飲み干す
これで、みんなを巻き込まないで済むと
俺は安心していたけれど
すべてはまだ、始まりに過ぎなかったんだ
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