第8章 僕達の失敗
【空言】
会わないと決めても
ふと過ぎる、アイツの笑顔
簡単に、嫌いになんかなれない
やっぱり気になるのは、
アイツが頑なに何かを隠してる事
酒屋のバイトを辞め、
ゆうに内緒にしてる事
結局あのまま…俺は何も知らない
ワザとらしいと思いつつ、
あれだけ拒否した櫻井を探るしかないと思った
親子丼の代金を握り締め、
放課後、雅紀がいないことを確認し、教室にいた櫻井に近付いた
「え?…どしたの?」
目を真ん丸にして、あからさまに驚いた顔をする
そりゃ、そーだろな
俺だって自分でどうかしてると思うよ
「アレだ。…やっぱ、どうかと思って」
つかつかと近寄り、櫻井の机に500玉を置いた
「頑なだね(笑)」
「お前に貸し作りたくねぇんだよ」
「……ま、いいけど。で?」
俺をジッと見入る櫻井
これだけの理由で来てるんじゃないって、わかりきった表情だ
「んもぅ、素直じゃないんだからぁ~ニノはぁ」
「お前、ざけんな」
遠回しに聞いた俺に、櫻井がにやつく
「あはは。ゴメン!
…俺もそれ、気になってんだけどね」
「……そう」
「夜はゆうと一緒だろ。昨日も電話したら一緒だったし」
「そっか…」
「仲いいしね」
「…まぁな」
とりあえず、夜はゆうと一緒にいるんだな
それなら心配ないけど
「じゃ、俺帰るけど…、
一緒に帰る?何なら家遊びに来る?」
「……冗談だろ」
「冗談って(笑)いやね?
ウチで可愛い犬飼ってんだけど、見に来ない?」
「は?行くかよ」
なんで俺が… ?
行くワケねーだろ
コイツ頭が良いんだか天然入ってんだか
「じゃな」
「ホントツレナイね。じゃ、またね」
櫻井の視線を背中に感じながら
教室を後にした
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