第8章 僕達の失敗
【白昼夢】
締め切ったままのカーテン
消したままの照明
時計を見ても、
それが午前なのか午後なのかさえわからない
微かに聞こえる雨音のせいか、ますます静寂に包まれる
こんなに俺は弱かったのかと、
雅紀に全てを知られ拒絶された途端に
電池が切れたように、店も学校もどうでもよくなってしまった
有り得ない 、こんな俺
ただ、雅紀と出会う前の生活に戻るだけだろ
身を削って仕事しなくても、
ユウさんの機嫌さえ取ってたらいいんだ
雅紀にとって、俺はもう
友達でも何でもない
あの日、知ってしまった
たまたま聞くなんて、
タイミング良くて笑うしかなかった
『たぶん、そうなんだと思う』
『え?』
『しょーちゃんに言われて気づいたんだ
…好きだよ、俺』
その後は、何も聞こえなかったけど
物音さえも響かない教室で
ただ、ふたりは見つめ合っていたのだろうか
そうか 、
アイツは櫻井を想ってたんだな
それでも、陰で助けになれればって、
もう一人のヒーローな俺が気持ちを保たせた
だけど
つぅっと頬を流れる感触に気付き、腕でグイッと拭いた
こんなじゃ、ユウさんをいつか陥れるなんて出来ない
雅紀と出会って、俺は俺じゃなかった
どうかしてたよ
ベッドから起き上がり、久々のメシにありつこうと
ジーンズに脚を突っ込んだ
ますます緩くなったウエストに気付き、ベルトで誤魔化す
多分俺は、 俺の環境になかったあの笑顔に
真っ直ぐな眼差しに
憧れを抱いたのだろう
ただ、それだけ
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