第8章 僕達の失敗
【目に見えぬ気持ち】
どうして…雅紀がココに?
ガラスの向こうに
呆然と立ち尽くす雅紀がいる
見つめ合ったまま、その次のリアクションが取れない
相手の男に、噛みつくようなキスをされ
雅紀の姿が視界から消えても、
絡みつくような視線を感じた
見てる
アイツが俺を
キタナイ俺を
グイッと腰を引かれ、
太股から持ち上げられた脚を大きく開かされ…
いつもなら冷静に受け止めて、意識して声を出すのに
「ああっ」
内から込み上げる動揺と、妙な熱
集中出来ない神経と
無理矢理繋がれ揺すられる身体
全てのバランスが保てなくて
「あっ…やめっ、ン…」
いつも以上に汗が噴き出し
感じたくなんかないのに、声が上がる
何度か果て、予定時間を過ぎると
相手の男はさっさと部屋を出て行った
汗ばんだ肌にシャツを羽織り、
ズボンに脚を通す
ジャケットを掴み、
向こう側に続くドアに手を掛けた
いつも以上に重いドア
ジャケットで隠した右手は、小刻みに震えてた
「ニノ、なにしてンの?まじで引くんだけど!」
蔑んだ視線
胸元を覗く、軽蔑した眼差し
「あのお金さ?ニノでしょ?
そんなキタナイ金だったなんてな」
身体売って、金稼いで
男に飼われて生きてる
マトモじゃないよ
そんなこと言われなくてもわかってる
わかってるよ
わかってるけど‥‥
雅紀は冷たい視線のまま、静かに放った
「ニノに助けて貰う理由なんてないし。
迷惑だから」
ふいっと背中を向けられ、雅紀はドアの向こうに消えた
全身の力が抜け、頭の中が空っぽになった俺は
その場に崩れ落ちる
「お前は僕の物でしょ?忘れちゃいけないよ」
にっこりと微笑むユウさんを見上げた
そうか
ユウさんが雅紀を連れてきたのか
現状だけで、全てを理解したつもりでいたけど
まさか、ドアの向こうで
雅紀がスーツに着替えていたなんて
……知るわけなかった
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