第8章 僕達の失敗
【ソノラマ】
「やっぱウマイ!焼きそばパン!」
無理矢理ハシャいでさ
ホントは、今すぐ問い詰めたいけど
雅紀がパンを食べ終わるのを見守って‥‥
しばらくしてから口を開いた
「オマエさぁバイト辞めた?」
あまり深刻に聞こえないよう、
軽いトーンで、語尾を上げる
表情が一瞬、強張ったよね
自分でも嘘ヘタクソだって、知ってんだろ
「バイト先の酒屋に行ったんだ」
「そ…そっか……」
「なんかあった?」
ケータイを弄るフリしながら、雅紀を見ると
嘘はバレると観念したのか素直に頷いた
「うん。少し前に辞めたんだ」
「そっか。…で?」
目線がぶつかり… 数秒の間
ずっと続けてきたバイトを、ゆうにも内緒で辞めてさ
俺にだって、一言くらい言ってくれたって‥‥
「あの…ね…」
また1人で悩んでんじゃないかって気になって
ただ、俺は
「ウチにさ、お金が届くの。
最初は気持ち悪いって思ってたんだけど‥‥」
思い掛けない話に、
ドクドクと心臓が高鳴り出す
「別に何も起こんないし、ラッキーかなって。
もしかしたらさ、神様が恵んでくれたのかも」
「‥‥‥」
「だからー酒屋のバイトなんか辞めてもいいかなって。
何にもしなくてもお金が手に入るんだよ?」
笑って‥‥
なに‥‥言ってんだよ
「マジメに働くのバカみたいって思わない?」
なに‥‥笑ってんだよ
黙り込んだ俺と
テンションの高い雅紀
慌てて取り繕ろうと、櫻井が雅紀の肩を掴んだ
だけど‥‥
「っざけんな!」
目の前にある机を、思い切り蹴った
勢い良く机が倒れ… シンと静まり返る
睨んだ俺を
雅紀がジッと見てる
「ふざけんなって言ってンだよ」
ざけんな
ふざけんなよ
ラッキーだって?
神様が恵んでくれただと?
そんな言い訳いらないって
オマエは嘘が下手だって言ってんだろ
どうして何も
話してくれねぇんだよ
なんで、隠すんだよ……
ただ俺は
頼って欲しいだけなのに
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