第8章 僕達の失敗
【嘆きの天使 3】
「モタモタすんな。仕事だろ?」
恐る恐る近づき、
男の肩に手を添え、ゆっくり腰を下ろす
メリメリと音が聞こえる気がするのは‥‥
身体への負担が相当だからだ
「ハッハッ…アァ!…ン!」
小刻みに息を吐き、
痛みを逃がそうとする俺の腰を
男は思い切り引き寄せた
「ッ…ウゥッ…!!」
準備なしに埋められた圧迫感で思わず吐きそうになる
男は、顔を歪ませた俺を鼻で笑い‥‥
『挿れてヤってンだから喘げ』と、尻を叩いた
痛い…痛い…
熱く焼けるような痛み
眩暈がして、意識が遠退きそうになる
身体をいくら揺すられても、気持ちいいわけなくて
冷や汗が滲むのもわかった
苦痛の声が、
男には喘いでいるように聞こえるのか‥‥
「あぁっ…ン!…ヒィッ…!!」
満足気な男の顔が、霞んだ視界に映る
「オマエ、
俺がキライなヤツに似てンだよなぁ」
乱暴に突き上げられ
祓いせに痛めつけたくなったのか
蔑んでみたくなったのか
痛み以上の惨めさ
永遠に思えるほど、苦痛な時間
延長もなかったから、ちょうど一時間だったはずなのに
「まぁ、モトは取れたか」
吐き出された男の欲が、顔と下半身を汚し
雑巾みたいに、床に投げ出された
上半身はネクタイもそのままで、シャツのボタン1つ開いてない
晒された身体は、急激に温度を失う
ドアが閉まり、1人取り残され、途端にガタガタ震え出す
涙が勝手に溢れた
俺は‥‥何にもわかってなかった
この仕事も、ニノの事も
ユウさんの優しい行為とは全く比べられない
大事にされないのは当たり前なのに
男の、俺を見る目が怖かった
無理矢理引き寄せられ、
爪を立てられた肌に血が滲んでも、苦痛に表情を歪ませても
男の顔色は何ひとつ変わらなかった
それは俺が、ただの玩具だからだ
両腕で顔を覆い、声を殺して泣いた
泣くのはこれで最後にするからと、自分自身に言い訳した
俺には、泣く権利なんてないんだから
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