第7章 僕が僕のすべて
【conduct】
「…っ」
アルコールと煙草の匂い
香水と混じって、俺の鼻を擽る
まるで催眠状態にでもなったみたいに
身動きさえ取れず、固まったままの俺から唇を離すと
‥‥ユウさんは笑った
途端に体が熱くなって、恥ずかしくなる
どうリアクションしたらいいんだよ!?
「初めてじゃないよね?」
「は、はい。初めてじゃないです!中学ん時、クラスの子と…」
「ああ、そう。クラスの子と?‥‥可愛いね」
ユウさんの笑顔の意味がなんとなくわかって
落ち着かないまま、グラスの水を勢い良く飲んだ
「動揺してる?」
「えっ。は、い。して、ます‥‥」
確かに、ここはそういう場所だけど
どうしてユウさんが?
頭ン中、ワケわかんなくって‥‥
「ちょっとからかってみたんだけど」
「あ~そう、ですよね」
「じゃあ、僕が望んだら何かしてくれるの?」
イタズラな笑みで、ユウさんが俺を見てる
「望んだら、ですか?でも俺、男ですよ」
本気で言ってる、の?
この店ではそんなの関係ないこともわかってるけど
ニノが男の人と重なってるのが頭に浮かんで‥‥また、胸が苦しくなった
俺は、ズルい
ニノは、俺の為に‥‥あんなコトしてきたのに
膝の上に置いた手を握り締め‥‥ ユウさんに、笑顔を見せた
「出来ることがあるなら‥‥やりますよ、俺。
いつまでも甘えてられないし。覚悟したから」
「可愛いね。君は」
俺の頬に掌が触れる
ビクンと跳ねる体
近寄るユウさんの顔
吸い付くように唇が寄せられ、
隙間から舌が入って来る
直ぐに俺の舌は捉えられ‥‥
グッと全身に力が入るのを意識しながら、
ヤラシイ水音とねっとりとした感触で、頭がぼうっとする
「ハァ、……ン…あっ…」
漏れる呼吸を掻き消されるように、
また角度を変え、
深く、深く、交わってゆく
数秒のキスなのに
未経験の激しさに、ついてけない
唇が離された途端、肩で息をした
2人を繋げた粘着した糸の名残が見えて、
恥ずかしくて、
ユウさんを見る事が出来なかった
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