第7章 僕が僕のすべて
【unexpected 1】
一人目の仕事が終わり、
シャワーを浴びて、控え室に戻ると
待機していたサトシが目に入った
ネクタイをだらしなく首に下げたまま 、リラックスモードだ
向かいに座った俺に気づいて、読んでた雑誌を閉じた
「久しぶりじゃん。出勤時間変わった?」
サトシがそう聞くのも無理はない
毎日のように会っていたのに、
ここ最近、顔を合わす事がなかったからだ
「あ~、なんか上の都合で、
予約の常連客ばっか相手してるからさー
営業時間帯待機ってカタチじゃなくなったんだ」
「へ~?」
「シフトの都合かな」
最近、いきなり上に呼ばれて、そうして欲しいと言われた
その方が確実に稼げるし、同じ客だと性癖もわかって相手しやすい
待機だと、収入は歩合制だし、一見様がムチャ言うしね
「だから、VIP客あと1人で今日はオシマイ」
「へ~。そーなんだ」
「そ♪」
身体も多少マシだし
数をこなさなくても、収入は約束される
「あ~、もしかしたら新人入ったせいかな」
「新人?」
「顔売るためにさ、ワザとリストの人数減らしたりすんの。
カズナリは人気あるから、そのせいかもね」
「そうなんだ」
わかってるようで、あんまりわかってないからな。この店のシステム
稼げたら何だっていんだけどね
「ガッチガチに固まってさ。スーツの裾掴んだりして可愛いの」
「新人の話?
そんなんで仕事になんの?」
「開発すんのが趣味な客多いよ」
客の数だけ、好みもあるか
それに合わせて、いろんな人形揃えてるってワケね
「あ~、ひと仕事済んだら腹減ってきたわ」
ボヤいた俺に、
サトシが手渡してきた
「チョコレート?戦利品?」
「そうそう」
「……甘いもん苦手なんだけど」
そう言って、渡された赤いパッケージを返す
「なんだよ、いらねーの?
新人くんは素直に貰ってくれたぞ」
「すみませんねー
素直じゃなくってー」
「ふふ。なんてね。
カズナリは素直で可愛いよ」
「気持ちワリーな。なんなのよ」
サトシとの他愛ないやり取りに、自然と気が休まってた
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