• テキストサイズ

桜の散った後は

第1章 刀剣女士顕現


主「もうそろそろ夕餉の時間だ。雫はその時に他の刀剣に挨拶すればいい」


『はい。主さま。有難うございます』


雫の返事に満足した審神者はうん、と頷いて、自室に戻っていった。……新選組の乱闘ともいえる騒がしさは放っておいて。


出来れば、雫としてはこの騒々しい状況を主である審神者にどうにかしてほしかったが、あの父親のような優しさを持つ審神者さえ素通りしたということは、もはや打つ手がないのだろう。


早々にどうにかしようということを諦めた雫は、目を閉じ、元の主に思いを馳せた。



ハルちゃん。私は貴女と同じような人の身になりました。時代の進歩は恐ろしく、何が起こるか分かったもんじゃありませんね。


刀の頃の皆の印象と今の皆の様子は違いがあり過ぎて、若干の戸惑いはありますが、まぁ、多分、平気です。


一抹の不安に多少遠い目になってしまった雫であったが、加州が抱きついてきたことでそちらに意識が向いてそれ以上考えずに済んだ。


加州「しぃ!俺達の部屋、案内するよ」


大和守「行こう、行こう!」


『はい。お願いしますね』


二人が勧めるがままに顕現部屋の外へ足が向いていた雫が、ふと堀川の様子を伺った。


堀川「雫……」


先程のような取り乱し方はしていなかったが、茫然自失の状態で床と同化していた。


……あれをどうにかするのは私では無理ね。


雫は静かに目を閉じて、堀川の姿を心の奥底に仕舞い込んだあと、ゆっくり息を吐き、踵を返して見て見ぬふりをした。
















/ 16ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp