第1章 刀剣女士顕現
主「新しく来た打刀だ。刀剣男士ではなく刀剣女士だ。この本丸で唯一の女性だから、みんな、生活には気を使うように。あと、刀剣女士については政府に問い合わせている」
『お初にお目にかかります。無銘刀の雫と申します。どうぞよしなに』
夕餉の際、審神者に促された雫は、審神者の横に立ち、そう言ってお辞儀をした。よろしく、だとか、なぜ女子が?だとかそんな声が飛んでくる。
たしかに、いきなり刀剣男士の中に女士が来たら戸惑うわよね。
雫は内心苦笑いしながら、歓迎の言葉に微笑んだ。そうすると、何やら髪の長い少女のような容姿の子が雫のもとにやってきて、雫の手を握った。
女の子?……いえ、でも私以外に刀剣女子はいないはず。ってことは男の子ね。
雫は握られた手が意外に力強く、骨ばっていることに気付いて、そう考えた。
乱「よろしく〜!ボクは乱藤四郎。その服、可愛いね、ボクと乱れちゃう?」
『乱だから乱れちゃう?ですか……。ふふっ、良いセンスをお持ちですね、よろしくお願いします』
乱「わーい!よろしくぅ〜」
乱のセリフが綺麗にかわされたところで、薬研藤四郎が近付いてきて乱の回収をするついでに自己紹介をした。
薬研「乱が見事にまかれたなぁ。俺っち薬研藤四郎だ。雅なことは分からんが医術には覚えがある。何かあったら頼ってくれ」
『はい。よろしくお願いしますね』
薬研は雫の前に手を差し出し、握手を求め、雫はそれに答えて薬研の手を握り、微笑む。薬研もその笑みに短刀にあるまじき男前の微笑みで返したところで、加州が二人の間に割って入った。
加州「はーい、もうお触り終了。これ以上触るなら俺を通してもらうよ、薬研」
雫を抱き寄せて、睨む加州を薬研は意に介さず雫の手を握り続ける。
薬研「おっと、驚いた。もう加州の旦那の眷属なのか?」
加州「いや、まだだけど……でも、いずれはね」
大和守「違うよ!僕のけ……」
『二人とも?』
薬研の言葉に照れる加州と、必死に否定する大和守に、雫はニコリと笑ってその後の言葉を制した。
加州・大和守「「……はい」」