第1章 刀剣女士顕現
まさに喧嘩を売っている視線を投げられた短気な和泉守と実は邪道な堀川はその喧嘩を買って出た。
和泉守「あぁ?沖田とハルがお似合いだぁ?馬鹿野郎、歳さんとハルのほうがずっと似合いだったろ!常に寄り添って背中を預けてきたのはあの二人だ」
堀川「大体、ハルさんは歳さんに拾われて新選組入りしたんだし、歳さんと好い仲になるのは当然だよね」
加州「常にあの二人が寄り添ってた?土方さんがハルがいないとダメで目が離せなかっただけでしょ」
大和守「拾った恩人と好い仲とか定番すぎだし、第一、ハルの戦友は沖田くんだよ」
和泉守・堀川「……良い度胸じゃねぇか(ですね)?」
加州・大和守「やるか?」
いつの間にか火花を散らし始めた沖田組と土方組。それを見兼ねた長曽根が、2組を放っておいて雫と共に審神者に説明した。
長曽根「ハルの実績をあげるなら、100人斬りや楠木小十郎の粛清、古高俊太郎の自白その他諸々。大半は記録に残ってなかったり、ほかの人間に書き直されていたりする。ハルが最低限しか記録に残ることを嫌がったからだ。あと、書けないくらいエグかった。……まぁ、あいつらの様子で分かるように、ハルはかなり新選組の幹部に好かれてた。だからか、あいつらも雫を猫可愛がる。まぁ、多分、俺も例外じゃない。そこらへんは理解しておいてくれ」
主「ひゃ……エグ……わかった」
「100人斬り」だの「書けないくらいエグい」だの容赦無い実績に、審神者は顔から血が引くのを感じた。
それを見ていた雫は苦笑いしながら、審神者の目の前に座って、口を開いた。
『主さまがそうなるのも無理はありません。ハルちゃんは孤児でしたが努力家で、心の強く優しい人でした。幼い頃から一人で生きるしかなかった彼女は感情や表情は豊かではありませんでしたが、己を拾ってくれた新選組のことを大切に思っておりました。だから、大切な新選組の為ならばとどんな任務も遂行してきたのです』
目尻を下げて懐かしそうに微笑む雫をみた審神者はそのハルという人がなぜ好かれたのかが分かる気がした。