第1章 刀剣女士顕現
和やかな雰囲気の中、ただ一人、その流れについていけない男がいた。
主「……あの、説明求む……」
そう。この本丸の大黒柱、審神者である。
審神者は混乱を隠せずに、まともな返答が来そうな堀川と長曽根に視線をやった。
加州「えーっ、主、しぃのこと知らないの?」
大和守「……いっぺん、首落ちとく?」
主「えー……」
審神者の願いも虚しく、その声はいつになく過激派な沖田組によって返ってきた。
堀川「まぁまぁ。二人とも落ち着いて」
長曽根「雫は元の主があまり記録に残ってないからな。主が知らなくても不思議じゃない」
まともな二人に諌められた沖田組はツンと口を尖らせて、引き下がると、なんと和泉守が審神者に誇らしげに教えはじめた。
和泉守「雫の元の主はハルって言って、土方歳三の小姓兼観察方だった奴だ。実は女だったが馬鹿強くて、長州の奴らには『土方の狗』だの『慈悲無き殺人人形』だの、そんな異名をつけられるほど恐れられていた」
加州「そーそ。しぃそっくりの美人だったけど、無口で無愛想で、土方さん以外には従順じゃないへ・ん・じ・ん」
大和守「でーも!沖田くんとはすごく仲が良かったんだ!沖田くんとハル……お似合いだったなぁ」
加州「俺達はてーっきりハルはあの人とくっつくと思ってたのに」
大和守「どこかの新選組のどこかの副長が蝦夷にまで連れて行っちゃって、結局沖田くんとハルはくっつけずじまい……」
加州・大和守「ねーっ!和泉守、堀川?」
加州と大和守は見事な連携プレーをみせ、和泉守から説明役を奪い取ると、今度は土方組である和泉守と堀川に恨めしさを全面に押し出した眩しいほどの笑顔を向けた。