第1章 刀剣女士顕現
ガルルと鶴丸を威嚇する大和守と加州は雫の番犬そのもの。鶴丸はやれやれと肩をすくめて、これだから若いやつは血の気が多いな、と笑った。
そこに燭台切光忠と歌仙兼定がやって来て、早く席に着くように言う。
燭台切「鶴さん!早く自分の席に戻ってよ」
歌仙「せっかくの夕餉が冷めてしまう」
大和守・加州「はーい」
『申し訳ありません、えっーと……』
燭台切「あぁ、自己紹介がまだだったね。僕は燭台切光忠。伊達政宗公の刀さ」
歌仙「僕は歌仙兼定。兼定の中でも腕の良い2代目兼定の作。風流を愛する文系名刀さ」
『よろしくお願いします、燭台切さん、歌仙さん』
雫がペコリと頭を下げれば、燭台切も歌仙もうん、よろしく、と言った。それをみた加州はすかさず二人の本丸での役割の一つを説明する。
加州「燭台切と歌仙は料理ができるから、特に厨当番をお願いしてる。今日も二人が作ってるよ」
『えっ、すごい!全部美味しそうです』
加州の話に目を煌めかせて笑う雫に、和泉守が若干苦笑しながら言葉を投げた。
和泉守「なぁに言ってんだ。お前の前の主なんて、新撰組の隊士全員分の飯を一人で作ってたろ」
燭台切「それは興味深い話だね!」
歌仙「もっと聞きたいが、おしゃべりは食べながらでもできるだろう?」
和泉守の言葉に食いついた二人だが、雫の元に来た目的を思い出して、食事を促した。
今度こそ、全員が席について審神者のいただきます、の掛け声とともに夕餉が始まった。
これが、雫の初めての食事。刀の頃は考えもしなかった、ハルが食べたものと同じものを口にして、味わう。
それが、こんなに心が温まることだなんて、知らなかった。