第1章 刀剣女士顕現
雫の背後に大きな般若が見えた加州と大和守は口を固く閉じ、冷汗を流しながら正座。ひたすら「ごめんなさい」「スミマセンデシタ」「反省してマス」を連呼している。
その親し気だが明らかにビビっている様子の加州と大和守に、他の刀剣男士たちは雫が新撰組と近しい者が主だったのだと理解した。
それをみた薬研は粟田口の長兄である一期一振に耳打ちした。
薬研「加州と大和守か…。倒す相手としては不足無しだぜ、いち兄」
一期「や、薬研!?なにを言ってるんだ」
薬研「違ったか?いち兄はああいう女が好みだと思ったんだがな」
一期「彼女は仲間だよ。まったく……」
薬研「好みってことは否定しないんだな」
にやりとしたり顔の弟に、深く溜息をついて眼を自らの手で覆うことしかできない長兄である。
三日月「はっはっはっ、仲良きことは美しきかな。俺は三日月宗近だ。平安生まれのじじいさ。よろしく頼む」
『はい。よろしくお願いします、三日月様』
三日月「そう硬くならずとも、俺のことはじじいでも三日月でも好きなように呼べば良い」
『しかし……』
明らかに刀としての格も年月も違う三日月を呼び捨てにしたり、ましてやじじいなんて呼ぶのは雫には大きな抵抗があった。しかし、背後から近付いてくる気配に気づき、後ろを振り返ると、頭から足の先まで真っ白な鶴丸国永がいた。
鶴丸「お嬢、三日月の言うとおりにしておけ。これから俺達は一緒に戦場を駆け回る仲間であり家族だ。打ち解けるのは早いほうがいい。おっと!自己紹介を忘れてたな。俺は鶴丸国永。お嬢に驚きを与えよう」
『……分かりました。よろしくお願いします、三日月さん、鶴丸さん』
加州「しぃ〜。ほんとにいいんだよ、この二人のことそんな風に気遣わないくていいの。本丸でのあだ名はね、三日月はマイペースじじい、おじいちゃんで、鶴丸はびっくりジジイ」
びっくりジジイ……。その言葉に衝撃をうけは雫は思わずフラッとよろけるが、加州がそれを支えた。
大和守「鶴丸さんはね、本丸のどこでも落とし穴作ってるから気を付けてね」
鶴丸「お嬢が落ちるのもまた一興だなぁ」
大和守「もししぃが落ちたら僕達で鶴丸さんの首を落としに行くからね」