ヤンデレヴィクトル氏による幸せ身代わり計画【完結済】
第4章 関係が拗れる話
そして玄関の取っ手に手をかけたその時。
「ヴィクトル、やっぱりまだ家に居たんだね、電話にも出なし、っ ヤコフコーチが怒って……え?」
丁度向こうからドアが開き、彼の愛する弟子が入ってきた。
「勝生、選手…?ったすけて!」
「え?あなたは……」
勝生勇利がシーツで身を隠しただけの桜の姿を目で捉えた瞬間、彼女の後ろから見知った男が近付いているのが目に入った。
桜の不在に気付いたヴィクトルは、彼女を追いかけきていたのだ。
「なにしてるの?桜…あの男の次は
ユウリに媚を売ってるの?」
「ひっ、、いや、いやったすけてっ勝生選手、助けてっ」
「まだお仕置きが足りてなかったみたいだね…」
ヴィクトルは彼女の髪を掴み、寝室へと引きずっていく。
その際にブチブチ、と数本髪が抜けたが、一切の配慮はなく寝室へ連れ込み、尚も抵抗する桜の首を締めて大人しくさせると、手足を縛り、ベットへ転がした。
先程放ったらかしにしていた弟子の存在を思い出して、部屋から出たヴィクトルは、万が一にも中から逃げられないようにドアの前にチェストを置いた。
「今の、なに?」
いつの間にここまで来ていたのか、彼の愛弟子、勝生勇利は声を荒らげて、先程の行為を男に問いただした。
「何してるのヴィクトル!?今の人は?恋人だとしてもやりすぎじゃないの!?」
「ああ、ユウリ心配しなくて大丈夫、ただのコールガールだよ、恋人なんかじゃない、ちょっと興が乗っちゃってね、そういうプレイ中なんだ。大丈夫、なんでもないから気にしないで。ああ、そうだ、わざわざ迎えに来てくれてありがとう」
「コールガール?」
「そうだよ、だからユウリは気にしないで、シーズンは目前だ。練習に集中しようね」
この会話はもちろん桜にも聞こえていた。
優しい声音で弟子を気遣うヴィクトルに、自身をただのコールガールと称したヴィクトルに……そして、彼を優先して出ていってしまったヴィクトルに………。
(ただのコールガールだと思っていたくせに、何故以前は優しくしてくれたの?なぜ私はさっきまで、あんなにも厳しく責め立てられたの?
ただの身代わりだからあんなに酷く扱ったの?
どうして?酷い、酷い!)
途方もないショックを受けた桜は嗚咽を漏らし、ただただ涙を流した。