ヤンデレヴィクトル氏による幸せ身代わり計画【完結済】
第3章 少し関係の進んだ身代わりの話
「そんなさらりと言わないでよ…まぁでも裸でいるよりはマシかぁ」
なんだかんだ言いながらも桜は結局エプロンを受け取って、よくある裸エプロンの姿をヴィクトルに晒した。
「サクラって結構チョロいよね、本当に気をつけなよ?」
「ご忠告どうも…ふぅ、もう病み上がりなんだから座ってて?あ、冷蔵庫とか勝手に触るからね」
「ありがとう、なんだか新婚さんみたいだね」
「そうだねー(この人実はまだ熱があるんじゃ…いや、よく考えたら元からこんな人だったかもしれない)」
桜は生返事を返して、そう思いながら、冷蔵庫や棚を開けて目的のものを探し出すと、手際よくブリヌイを焼き上げ、付け合わせるものをお皿に盛り付けた。
「ヴィクトル普段から料理するんだね、冷蔵庫の中に色々入ってたからびっくりした」
「まあ一人暮らしも長いしね、必要に迫られてやってるだけだよ。あ、でもスーパーでお惣菜もよく買うよ」
テーブルに並べて、いただきますと手を合わせる。
各々が好きな具材を生地にのせて、口に運びつつ、会話を続けた。
「そうなんだ、棚に蕎麦の実あったけど、朝カーシャ派だった?」
「いや、気分に応じて変えてる。簡単だからパンの日も多いかなサクラは?」
「うちは基本和食かパンかな、たまにブリヌイとかカーシャも食べるよ」
朝食談義で盛り上がり、すっかりお腹が膨れた頃には、桜は自分の姿が普通ではないことをすっかり忘れており、片付けるために立ち上がった時に思い出した。
「そういえばヴィクトル」
「なぁにー?」
「昨日着てた服とソファーの近くにおいてあった私の服は?もう目的を果たしたんだから返してくれるよね?」
「えー、もう少しその格好を堪能したいんだけど、ああでもサクラが風邪引いたら嫌だな。ちょっと待ってて」
そうしたやり取りを経て、やっと桜は裸エプロン姿を脱する事が出来た。
「昨日着てたものは今洗濯してるから、明日には乾くと思うよ」
「ありがとー…って待って、それって下着も?」
「勿論だよ。ちゃんとネットに入れてあるから心配しなくていいよ!」
「ああそう、お気遣いどうも」
キラキラとした笑顔で誇らしげにそう言ったヴィクトルに、桜は突っ込みを放棄した。