ヤンデレヴィクトル氏による幸せ身代わり計画【完結済】
第3章 少し関係の進んだ身代わりの話
「ヴィクトル、ヴィクトル起きて、ここで寝てたら悪化するから」
「…ん、あれ?サクラ…なんで?」
「なんでってちゃんと出る前に連絡したじゃない、それよりベッドに行こう、歩ける?」
「ちょっと待って」
ヴィクトルが緩慢な動作で起き上がると、近くを手探りスマホの画面を見る。
それを桜へ差し出し、画面に目をやるとメッセージのやり取り画面が表示されていた。
「ごめん、今日は体調が悪くて、来なくていいって連絡しようと途中まで打ってたんだけど、送信する前に寝てしまったようだ。疲れから来るものらしくて、伝染るものではないからそこは安心してほしい」
「そうなの、薬は?」
確かにメッセージは作成途中のようだった。
桜はスマホを返して「お水取ってこようか?」と続けて問うたが、ヴィクトルはそれに対し、いいよ。と首を振った。
「解熱剤とかは効かないみたいで、貰ってないんだ。安静にするように言われたよ」
「安静…ならベッド行こ?」
「ワオ、エッチのお誘い文句みたいだね、なんで俺は今元気じゃないのかな?とても残念だよ」
「そういう事を言えるくらいには元気そうで安心した。ところでご飯は食べた?」
こんな時に何を言ってるのかと怒鳴りそうになったが、相手は病人。
気持ちを鎮めて桜はそう言った。
「食べたよ、お腹いっぱいだったからメッセージ打ってる最中に寝ちゃったのかも…せっかく来てくれたのにごめんね、1人で大丈夫だから帰ってくれていいよ」
「気にしないで。心配だしベッドまで辿り着くのを確認してから帰ることにするね」
「ありがとう」
ヴィクトルがソファーから立ち上がり、少しふらつきながらも歩き出した。
桜も軽く背中を支えながらついて行き、マッカチンもそれに続いた。
リラックス出来るから、と服を脱いでヴィクトルはベッドに入った。
桜は体調悪いのに大丈夫なのかな、と少し心配しながら髪を梳くように撫でれば、彼は気持ちよさそうに目を細め、そしてその手をとって頬に擦り付けた
「ゆっくり休んでね、お大事に」
「ありがとう」
「じゃあ帰るね、また元気になったら連絡ちょうだい」
「うん…」
「じゃあね」
「うん」
「…ヴィクトル?」
「うん?」
「手を離してもらえないと帰れないんだけど」