ヤンデレヴィクトル氏による幸せ身代わり計画【完結済】
第2章 身代わりの話
家に招待する前にお風呂に入りたいと言ってたので、入れてあげようかとも思ったが、アルコールが抜けきっていない彼女を風呂に入れるのは危ない。
それにあどけない寝顔を見ていると起こすのも忍びなく思い、結局その日は暖かいお湯につけて絞ったタオルで体を拭いてあげただけだった。
「え?いいよ、自分で入れるからっ」
「大丈夫大丈夫、俺マッカチン洗うの好きだし、上手に出来ると思うんだ。サクラも気に入ってくれると思うよ!」
ぎし、とベッドが軋む音に慌ててシーツから顔を出せば、ヴィクトルはしてやったりという顔で桜をのぞき込んできた。
「からかった!?からかったの?」
「ごめんごめん、反応が面白くてつい、ああでも入れて欲しいなら大歓迎だよ!」
「いらない!」
キラキラと眩しい笑顔を向けられて桜はもう!と短く唸ってから枕に顔を埋めた。
体がベタベタするけど、怠くて動きたくない、だからといってお風呂に入れてもらうなんて有り得ない。
そういうのは恋人同士がするものであって、ただの身代わり相手にするのはおかしい事だ。桜はそう思い、お風呂を諦めて瞳を閉じた。
その後桜はぐっすりと寝入ってしまい、目が覚めたのは朝日が出てきてからだった。
いつの間にか彼の愛犬もベッドに入ってきていたみたいで、ふわふわの毛並みが腕に感じ、折角のふわふわをよごしちゃったら大変だ!と慌てて腕を遠ざけた。
よくよく確かめるとベタつきは無くなっていて、けれどもさっぱりはしていないことからおそらくまたタオルで拭いて貰った事が伺えた。
(気持ちよかったな…。前回のをカウントしなければ、前の彼氏と別れてから結構ご無沙汰だったし、お金も貰えるし、なんか可哀想だし、たまに意地悪…というか何を考えてるのか分からない時もあるけど、悪い人ではないんだよねぇ…)
マッカチンを抱き込んで眠る美丈夫を横目で見ながら桜はそんなことを考えた。
それからどうしても家のお風呂に入りたくなった桜は大きく伸びをして、体に違和感が無いか確かめると、少しだけ痛む腰と秘所に軽く眉を潜め、ベッド下に落ちていた衣服を身にまとって、お金を貰うのも忘れて家の主が起きないうちに帰路についた。