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大人の恋してみませんか?

第1章 日常



「じゃ、失礼しまーす。」

そう言って私の隣に座る彼はーーー

柔らかい声で優しそうな笑顔。
いかにもいい人そうな第一印象だった。

「初めまして~」

「あっ…初めまして。。。」

さっき話していた、面倒くさいと言っていた会話に思わず目の合った後輩に苦笑いする。

「えっ?何?なんで笑ったの?」

「いや、何でもないですよ。」

そう言って、私はグラスに口を付けてお酒を流し込んだ。

「うん、いい飲みっぷり!ねぇ、名前聞いてもいい?」

「えっ…あぁ~」

人に聞く前に自分が名乗れよ!
なんて一瞬思ってしまった(笑)

「あっ!僕は福山です。」

私、もしかして顔に出てたのかな?!

「えっと…高野…です。」

「高野さんね!よろしくね~」

軽く自己紹介をしてから、福山さんは…とにかく喋る(笑)

正直、適当に相槌を打って聞いていればいいから楽だった。

それでもやっぱり、それにも飽きて疲れてきた私はお手洗いに立った。

トイレの個室でスマホを弄り、いくつかのゲームのログインボーナスだけ受け取りに行く。

束の間の休息を終えて、洗面所の鏡に自分が映る。

「はぁ…そろそろ帰りたいなぁ。。。」

思わず溢れた独り言。

疲れた。。。
あのままいつもの女子会だったら、私か誰かしら“そろそろ…”ってなるのに。
みんな楽しんでるし、言えない。。。

きっと…たぶん、あともう少し…そう自分に言い聞かせてトイレを出るとーーー

「大丈夫?調子悪い?」

掛けられた声に顔を上げると、廊下の壁に寄りかかった福山さんがいた。

「えっ?あっ、はい。大丈夫です…」

柔らかい声につい本音が溢れる。

「けど…ちょっと、疲れちゃって…」

「疲れた?」

「もう…合コンみたいなノリ、楽しめるような年でもないし。」

私も福山さんの隣に並んで壁に寄りかかる。

「そうなの?えっ、高野さんっていくつなの?」

「…39です。」

「なんだ~僕のひとつ下じゃん!」

「えっ?そうなんですか?」

「うん、40。何?もう少し若いかと思った?」

「えっと…あぁ…まぁ…」

ぶっちゃけ年まで気になるほど興味がなかった…とは言えない。

「ふふっ、ホント素直すぎ。」

「えっ?何ですか?」

聞き取れなかったけど、福山さんはどこか楽しそうだった。
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