第16章 初陣 〜前日譚〜
「…はい」
秀吉さんと三成くんの顔がふと真面目になったのを見て私も居住まいを正して話を聞く体制を整える。
秀吉「近々、ちょっとした戦があってな…」
「え…」
顔をこわばらせた私に三成くんがすかさずフォローに入る。
三成「あっ…その、春日山とは関係の無い戦ですよ。」
秀吉「そうだ。最近御館様傘下に下った大名が反乱を起こしたらしくてな、その沈静のために行かなきゃならないんだ。小さい戦だからすぐ戻ってこれるとは思う。」
聞いて少しほっと息をつく私に、三成くんが続ける。
三成「ただ…その戦で春日山の方に刺激を与えてしまう可能性が……」
秀吉「まぁその…つまり春日山との戦も早まる可能性があるってことだ。………最悪、続けて起こる可能性もある。」
「……っ」
三成「秀吉様……」
秀吉「…その可能性は低いから安心しろ。お前はとりあえず少しはゆっくり休め。毎日針子に稽古に世話役の仕事に大変だろ?」
秀吉さんは強引に話をまとめて立ち上がる。続いて三成くんも立ち上がりかけて…何故かまた座り直した。
「………?」
三成「……舞様は、絶対にお守りします。…この命にかえても。」
三成くんは決意に満ちた表情でそう言って膝の上で握っていた私の両手をそっと包む。