第32章 想定外の
「…………」
驚きで固まっている私に、三成くんはどこか複雑そうな顔で言った。
三成「信長様暗殺未遂の犯人が分かりました。」
「えっ……あの時の………?」
三成「はい。以前信長様が焼き討ちなさった本願寺という寺がありまして……そこの法主を務めていた顕如という男です。」
「顕如……」
どこかで聞いたことのある名だと思い、必死で思い出す。
(……あ。)
「その、顕如って人多分だけど……信長様を助けたあと私、逃げたでしょう?あの時に顕如って名乗るお坊さんみたいな人と会った…」
三成「それは…思わぬ裏が取れました。それで、今顕如は京のある山に潜んでいるそうなのです。光秀様から文が届いて………」
「そっか……でも三成くん一人なの?」
三成「先の戦で兵が疲弊していますので、顕如討伐の前に私が兵を集めながら向かうことになったのです。……それで、舞様はどちらまで?」
「草津、ってとこで知り合いと待ち合わせてるの。」
三成「でしたら草津までは御一緒させて頂けませんか?もっとも……この調子でしたら明日には着いてしまいそうですが。」
「私は全然構わない、っていうかむしろ嬉しいけど、三成くんは大丈夫?急がなくて……」
三成「大丈夫ですよ。そもそも舞様に追いつけるかもと思い、かなり飛ばしてきましたから。実は安土を出たのはつい半刻ほど前なのです。」
「す、すごい……流石戦国武将だね…」
三成「私も自分で驚いていますよ。前に全力で飛ばした時もここまで速くは無かったですから。…………舞様に会いたい気持ちがそうさせたのでしょうね。」
そういって三成くんは私の手にそっと触れ、指を絡める。
重なった瞳にはどうしようもない熱が見えて………
(ぁ………)
なんだろう、すごく、ドキドキする。
三成「ふふっ、お顔が真っ赤ですよ?…少しは私のことも意識してくださっているということでしょうか。」
そういって三成くんはさらにゆっくりと身体を寄せてくる。
「う……ぁ………い、意識って……」
タジタジになりながらもなんとか答える。
三成「男として、少しは私のことも意識してくださっていますか、ということです。」