第15章 再会
「二人共、買うのかい?買わないのかい?」
永い間止まったように思えた空気が店主のおじさんの一言で動き出す。
「「買いますっ!」」
息ぴったり、二人して答えた。
金平糖を買って店を出ると、幸は私の手首を掴んでそのままずんずんと歩き出す。
「え、ちょっ……幸」
私を無視してずんずんと幸は歩いていって………
町外れの森の奥、花が咲き乱れる野原で幸はようやくこちらを向いてくれた。
幸「……悪い。帰りはちゃんと送ってくから。
…………っ、その……元気だったか?」
「う、うん…一応……幸は?」
幸「俺はこの通りだ。一応ってお前、信長に何かされたりしてないか?」
「えっ…だ、大丈夫だよ。びっくりするくらい良くしてくれてるし………ただ……」
戦に連れていかれそうになっている、と言おうとしてやめた。
幸「ただ、何だよ?」
「ううん、御守り扱いで暇したから世話役とお針子の仕事を貰ったって話。………ところで幸はどうしてここにいるの?」
幸「あー………まぁ、なんつーか。その……」
訊くと幸は気まずそうに顔を逸らしてしまう。
(聞いちゃまずかったかな……)
敵である幸は、もしかしたら偵察とかそういう、後暗い事で来ていたのかもしれない、と思い至る。
「ご、ごめん。変なこと聞いちゃったね。でも、会えて良かった!」
気まずくてわざと明るくそう言うと。
幸はふいに真剣な顔でこちらを見て言った。
幸「…俺に、着いてき………っ、そ、その!お前が安土で大変だったら俺らで何とかして匿ってやろうとだな!」
思いがけない幸の申し出と目の前の何故か妙に紅い顔に思考が止まってしまう。