第12章 安土で(5)
みんなが部屋から出ていったあと。
その場にへたりこんで
ただただ泣いていた。
ーー信長様か幸、佐助君。
どちらかの死を
見届けなければならない。
そのことしか考えられなくて
だからといって
もう一度信長様に
お願いする勇気もなくて、
情けなくて、
どうしようもなくて
…姫として着せられた
重い重い着物の袖を抱いて
ただひたすら泣いていた。
絶望だけが心にあった。
どれくらいそうしていたのだろうか。
泣き疲れていつの間にか
眠ってしまっていたらしい。
部屋はもう真っ暗で、
障子から透ける月明かりで
薄らと部屋が見える程度だ。
(とりあえず油を貰いに行かないと…)
部屋を出ようと襖を開けると…
脚に何かが寄りかかるような
重みを感じた。