第12章 安土で(5)
天主から部屋へ戻る途中ーーーー。
秀吉「……舞…
いい加減泣きやめ。」
「………っ!
泣いてないですっ……!…ひっく」
政宗「おいおい、言ったそばから
思い切り泣いてんじゃねーか。」
光秀「鼻水が垂れるぞ。」
「……っ。え?」
光秀「まだ垂れてないが。」
「…みづひでっ…しゃんの
ばがっ………うぐっ……」
家康「あーあ、みっともない。
あんあ一応、
織田家ゆかりの姫君でしょ。」
秀吉「こら、家康。流石に…」
家康さんは口ではそう言いながらも
手拭いを押し付ける手は優しい。
「あ、ありがとう…ございます……」
秀吉「………全く。」
政宗「お前の天邪鬼は
相変わらずだな。」
家康「放っといてください。
……大体、あんたがこんな所でそんな
みっともなく泣いてたら、
俺達が
何かしたみたいで困るから
渡しただけだから。
礼を言われても困る。」
「っ……で、でも
ありがとうございます……」
家康「……いい加減敬語やめたら。」
「え?今なんて……?」
家康「何でもない。」
政宗「おいおい、そこで
止めるなよ男だろ~」
家康「政宗さんのわけわからない
男だから理論押し付けないでくださいよ。」
政宗「ったく……」
その時、秀吉はただ何となく
後ろを振り向いた。
だから、その声は秀吉にだけ届いた。
三成「私は…どうしてこう
間が悪いのでしょう………」
いつも微笑んでいる
三成にしては珍しく、
目を伏せ物憂げな表情と小さな声。
手に持った藤色の手ぬぐい。
秀吉「………三成……」